【 感想 】帰ってきたヒトラー
この印象的な表紙に惹かれてつい手に取ってしまった。
確かこの本が原作の映画が今年に日本でも公開された。(まだ見ていないけど…ちょっと見たい)
ドイツ、というか世界でタブー視されているヒトラーをあえて風刺のネタにするなんて。すごいな…。
この物語はヒトラーの一人称ですべて書かれている。
ヒトラー目線で2010年代を見ている気分にさせてくれる。
やはり少々過激な思想が多いが、少ないところで「確かにそうかも…」と読者に思わせてしまうようなところもある。
「悪いことばかりじゃなかった」
物語の最後ではヒトラーとTV局の彼の職場仲間が新たな番組を作り、上のスローガンを掲げてまた歩き出していく。
色々と考えさせられるスローガンだ。
「悪いことばかりじゃなかった」…それは何に対して述べた言葉なのか。
ヒトラーが行ったことだろうか?
ヒトラーは自分の正義を貫いてあの所業を行ったと思う。少なくともこの小説内では彼は自分の正義に基づいて動いている。
人から見たら「悪いこと」だが、視点を変えるとある男の正義によるものだからそのように言えるのか。
それとも、過去から目をそむけないためにこのスローガンにしたのか。
1930~40年代はほぼ黒歴史化されていて、目も背けたくなる。
だがあえて「悪いことばかりじゃなかった」ということで、過去をまじまじと見るようさせたのか。
正直、続編を見てみたいと思う。が希望は薄いだろう。
この物語は彼らがまた歩みだすところできれいに終わっている。
この先に待つ未来はきれいな未来とは限らない。
綺麗なまま終わるほうがいい。