或る感想録

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【 感想 】『 ガラシャ 』 ~ある女の悲劇の一生

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ガラシャ / 宮木あや子

(※物語の内容に多少言及しています)

 

細川ガラシャ明智光秀の娘で細川忠興の正室。ガラシャは洗礼名で、本名は玉。

今年の大河ドラマでは橋本マナミさんが演じていらっしゃいますね。美しい…!

 

戦国時代に生きる女と男、それぞれの役割とは。

男はひたすら戦う。家や名誉を守るために。

一方の女は? 血を絶やさぬように子を産み、そして夫の帰りをひたすら待つ。

女は感情的である。やはり愛する人にはズットそばにいて欲しい。だが戦乱の世だとそうはいかず、すれ違いが多くなる…。

 

恋も知らずに細川家に嫁いだガラシャ。戸惑いながらも忠興を愛そうと励む。だが父・光秀が謀反を起こし、ガラシャは一気に罪人の娘とレッテルを貼られてしまう。そして細川家から離され蟄居を言い渡される。

一方細川忠興は最初からガラシャを溺愛していた。蟄居も嫌がっていたが細川家のため、逆らうことが出来ない。2人の距離は遠くなり、心の底では想っているのに離れていってしまう。

 

物語は光秀、ガラシャガラシャの侍女、細川幽斎がそれぞれの章で戦乱の世を物語っている。

細川忠興ガラシャの関係は有名だろう。

忠興がガラシャを溺愛するあまり、暴力を奮ったり行き過ぎた行動をしてしまう。今で言うDVに近いのでは…?

 

明智光秀の娘と言うことで思い悩んでしまう。蟄居中の場面ではまだガラシャキリスト教徒ではないので、ひたすら自分の罪の重さに悩まされている。それ以外にも様々な悲劇が彼女を襲う。身ごもった子供を死産で亡くす、里で出会った男に惚れるが一緒になることも許さない。

まさに悲劇のヒロインと言わんばかりの悲劇の連続。さらに彼女はひたすら忠興を信じていたのにその忠興は側室を作り、子供を作ってしまう。

 

蟄居が終わり、大坂での生活では視点がガラシャから侍女に変わる。夫のDV、側室や細川家の侍女たちの冷たい視線。なんか昼ドラでありそうだ。ここもガラシャ視点だったな。少し見てみたい。

 

 ~感想~

ガラシャや侍女視点の章は女の美しさや醜さがリアルに出ていた。文章が簡潔で綺麗。

ただ、この侍女がガラシャとそっくりという点が…私はうーんと思ってしまった。ガラシャ関ヶ原の戦いの際に西軍側に人質にされるがそれを拒み家臣に殺させた、という話が残っている。だがここでは殺されたのはガラシャではなく、彼女の盾となった侍女になっている。

よく色々な小説で身代わりの話は出てきているが、なぜか読んでいてここの身代わりのオチは読んでいてシラケてしまった。あくまでも個人の感想ですが…。

あと、光秀と幽斎の友情が熱いけど悲しい。

幽斎の章は短いがこの小説のなかでも好きなところだ。細川家としての責任と光秀との友情の板挟み。そして息子の嫁の処分に戸惑う。ガラシャだけではなく、この悲劇は様々な人の思いが重なって生まれたのかもしれない。