【 感想 】映画『 鑑定士と顔のない依頼人 』(ネタバレあり)
記念すべき第一回の記事の題材はこの映画!
鑑定士と顔のない依頼人(2013)
原題 La migiore offerta
上映時間 124分
主演 ジェフリー・ラッシュ
オススメ度 ★★★★☆
〇あらすじ
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。*1
タイトルに惹かれて手に取ったので事前情報は全くないままの視聴。
正直だまされました…。すごい映画だ!
映像も綺麗! 鑑定というテーマもあってか劇中に出てくる古美術品は勿論、いろいろなところに”美”が見られる。映像を見ているだけでも楽しいが、それよりもストーリーに惹かれる。
途中までは孤独な老人と広場恐怖症の娘の恋愛物語かと思ったら最後の最後でどんでん返し。見ていて思わず「えぇ~っ」て声が出てしまった。どんでん返しがすごすぎて心臓に悪かった。
映像、ストーリー、役者の演技すべてがGOOD!
考察しがいがある映画で、2回みるべき映画だと思うが結末の辛さを思うと2度目を見るのが思いやられる…。
↓以下からネタバレ注意↓
〇人の心は偽れる
確か劇中でオールドマン(主人公)の友人がこのようなセリフを言っていた気がする。意味深なセリフだな、と思っていた。だが見終わってみるとこのセリフは映画のテーマの一つに思える。
オールドマンは美術品の真贋は見抜けても、結局は人の心の真贋は見分けられなかった。かなしいなぁ…。
彼は今まで仕事一筋で、趣味は女の肖像画集め。
女と目を合わせられないが肖像画の中の女の人とは目を合わせられる。そこからどこか愛されたいという欲求が彼にはあったのではないか?
そこに声しかわからない謎の女から鑑定の依頼がやってくる。
最初はいらだっていた彼だがいつしか病気の彼女に惹かれていく。あれだけ世話をしたりいろいろあったら惹かれるのも無理はないだろう。
だがそれが運のつきだった…。
最後のオークションの仕事が終わって家に帰り、趣味の肖像画鑑賞の部屋へ行ったときのあの絶望感が心にぐっときた。今までせっかくコレクションしていたものが一瞬にして消え去り、残ったのは額縁の跡のみ。それと部屋にはあのカラクリ人形が。
あのシーンはぞっとするが、一番印象に残って一番好きなシーンだ。
そこからジェットコースターを下るがごとく、オールドマンの老いが始まる。
信じていたものを一瞬にして失う絶望感がものすごく出ている。
ジェフリー・ラシュの老いの演技がすごいリアルで、ちょっとゾッとした。あの演技もこの映画の見所の一つだろう。
真贋というテーマから見てみると、オールドマンのクレア(偽)に対する愛は”本物”だが、クレア(偽)のオールドマンに対する愛は”偽物”だろう。そう疑ってかかるとロバートとオールドマンの友情も、オールドマンが一方的に友情を感じているがロバートにとってオールドマンはただのカモでしかない。
若者たちは全員貧乏役者で、ずっと演技をしてきてオールドマンを騙してきた。
ただ、ロバートの機械修理の腕だけは本物だ。最後に出てきたレストランは彼の店で、彼女の語ったデイアンドナイトの思い出だけは本物だ。
英題の『THE BEST OFFER』を直訳すると『最上のオファー』。
だがこれは誰にとって”最上”なのか?
私はあの若者たちにとって最上の仕事だ、と思う。しかし考察というのは人それぞれ考えることがあるので、この答えが正しいとも限らない。
考え深い作品だ。
すごいおすすめの映画ですが、単純明快な映画が好き!っていう人にはあまりおススメできないかな。
映画の好みなんて人それぞれですものね。