【 感想 】映画『独裁者と小さな孫 』
更新がだいぶ空いてしまいました…
この間は映画よりも読書ばっかりしてたので映画感想も怠け気味に
だけど久々に映画見ましたよ!(笑)
※ネタバレが少しあるので見てない方は注意
独裁者と小さな孫 (2014)
オススメ度 ★★★★☆
年老いた老人が独裁政治を揮っていた国である日クーデターが起こった。クーデターに巻き込まれた独裁者と小さな孫は服を捨て、身分を偽り逃避行を続ける。その逃避行の先には…。
ついつい孫を目で追ってしまう
この映画の独裁者は最悪な独裁政治を行っていた。国民から税をむしり取り、自分たちは贅沢三昧。また国民を虐殺してた歴史もある。孫も孫で甘やかされており、贅沢な暮らしをしてきた。映画の序盤は『糞ガキだな~』と思いながら見てました(笑)
でも見続けているとそういう感情もなくなってて、だんだんと可哀想に見えてくる。
いつしか陛下と呼ぶのを禁止されたり、家畜小屋で寝泊まりしたり、死体からスカーフを撮ったり…。
いくらあの醜悪な独裁者の孫といっても孫は政治に関しては何もしてないし、巻き込まれただけだ。あの独裁者と血縁関係があるが故に民衆から追われてしまう。かわいそうに…。
映画を見ているとついつい無邪気て小さな孫を中心に見てしまう。かわいいって言うのもあるし、かわいそうってところもあるからかな。
負の連鎖を断ち切る
最終的に独裁者たちは復讐心を持った怒れる民衆たちに見つかってしまう。
私は、この映画の見どころはこのシーンからだと思う。
今までこの独裁者は多くの犯罪者を処罰してきたし、国に悪政を強いてきた。その行為は許されざるものだ。
その独裁者を見つけた民衆たちは、独裁者と小さな孫を殺そうとする。
あるものは銃殺にしろと言い、あるものは火炙りにしろと、またあるものは孫から殺させろと提案する。どんどんと殺し方がエグくなっていく。
そんな時、逃避行中に出会った元・思想犯がその行為に異議を唱える。
孫には何も罪が無いのになぜ殺すのか、かつて独裁者の命令でたくさんの国民を殺してきた兵士達がなぜ国民の味方をするのか、独裁者を殺して何のためになるのか…。
元・思想犯は国の民主化を願って、体を張って民衆たちの復讐心を治めようとするが怒りに燃え上がってある彼らには無駄であった。
独裁者を強硬手段で裁いても、その後は何も残らないだろう。その後にはきっと国民同士で争う未来が見えている。
暴力に暴力を重ねては悲劇を繰り返すばかりだが、どこかで話し合いなどといった非暴力が入れば負の連鎖は断ち切れるはずだ。
そういったメッセージが感じ取れる作品。
革命は何も生まないのではないだろうか?
エンドロールの前、小さな孫が音楽に合わせて無邪気に踊るシーンがある。このシーンが泣けてくる。
孫はやっぱりただの子供。
なんで自分がこんな状況にいるのか、きっとまだ分かってないんだろうと思う。なのに大勢の大人に憎悪を浴びせられてきた。殺されそうになるシーンの怯える演技が凄くて、見ているこっちもついつい殺さないで!って思ってしまった。最初に糞ガキと思っていたのが申し訳ない(笑)
【 感想 】映画『嗤う分身』
嗤う分身(2014年)
上映時間:93分
主演:ジェシー・アイゼンバーグ
オススメ度:★★★☆☆
何かの映画のDVDの新作情報で見て気になりずっと探していたこの映画。
無料登録期間中だったTSUTAYAディスカスでレンタルして視聴。
さえない青年の前に突如現れた自分と瓜二つな青年。自分の分身のような存在が自分の居場所を奪っていく…。といった内容だ。
舞台は近未来のディストピア。希望なんて何一つ見いだせないくらい暗い。雰囲気が本当に暗い。
主人公の冴えない青年は列車にカバンを挟まれてカバンを失い身分証を無くしてしまうし、母親はもう老いて呆けている。母親を預けている老人ホームへの支払いも危うい。なんか見ていてつらい…。
興味のある方は是非ネタバレなしでこの作品を見ていただきたい。
この作品の不気味な雰囲気はいい。不気味すぎて顔がちょっと顔が引き攣る。
あと劇中に日本の昭和歌謡が出てくる。
これも作品の雰囲気に妖しさを増している。
暗い雰囲気なのになぜあんな明るい歌が流れるのか…
好きな人は好きそうな話しだが、苦手な人はダメそうだなーというのがまっさきに頭に浮かんだ。
【 感想 】『 ガラシャ 』 ~ある女の悲劇の一生
ガラシャ / 宮木あや子
(※物語の内容に多少言及しています)
細川ガラシャ。明智光秀の娘で細川忠興の正室。ガラシャは洗礼名で、本名は玉。
今年の大河ドラマでは橋本マナミさんが演じていらっしゃいますね。美しい…!
戦国時代に生きる女と男、それぞれの役割とは。
男はひたすら戦う。家や名誉を守るために。
一方の女は? 血を絶やさぬように子を産み、そして夫の帰りをひたすら待つ。
女は感情的である。やはり愛する人にはズットそばにいて欲しい。だが戦乱の世だとそうはいかず、すれ違いが多くなる…。
恋も知らずに細川家に嫁いだガラシャ。戸惑いながらも忠興を愛そうと励む。だが父・光秀が謀反を起こし、ガラシャは一気に罪人の娘とレッテルを貼られてしまう。そして細川家から離され蟄居を言い渡される。
一方細川忠興は最初からガラシャを溺愛していた。蟄居も嫌がっていたが細川家のため、逆らうことが出来ない。2人の距離は遠くなり、心の底では想っているのに離れていってしまう。
物語は光秀、ガラシャ、ガラシャの侍女、細川幽斎がそれぞれの章で戦乱の世を物語っている。
忠興がガラシャを溺愛するあまり、暴力を奮ったり行き過ぎた行動をしてしまう。今で言うDVに近いのでは…?
明智光秀の娘と言うことで思い悩んでしまう。蟄居中の場面ではまだガラシャはキリスト教徒ではないので、ひたすら自分の罪の重さに悩まされている。それ以外にも様々な悲劇が彼女を襲う。身ごもった子供を死産で亡くす、里で出会った男に惚れるが一緒になることも許さない。
まさに悲劇のヒロインと言わんばかりの悲劇の連続。さらに彼女はひたすら忠興を信じていたのにその忠興は側室を作り、子供を作ってしまう。
蟄居が終わり、大坂での生活では視点がガラシャから侍女に変わる。夫のDV、側室や細川家の侍女たちの冷たい視線。なんか昼ドラでありそうだ。ここもガラシャ視点だったな。少し見てみたい。
~感想~
ガラシャや侍女視点の章は女の美しさや醜さがリアルに出ていた。文章が簡潔で綺麗。
ただ、この侍女がガラシャとそっくりという点が…私はうーんと思ってしまった。ガラシャは関ヶ原の戦いの際に西軍側に人質にされるがそれを拒み家臣に殺させた、という話が残っている。だがここでは殺されたのはガラシャではなく、彼女の盾となった侍女になっている。
よく色々な小説で身代わりの話は出てきているが、なぜか読んでいてここの身代わりのオチは読んでいてシラケてしまった。あくまでも個人の感想ですが…。
あと、光秀と幽斎の友情が熱いけど悲しい。
幽斎の章は短いがこの小説のなかでも好きなところだ。細川家としての責任と光秀との友情の板挟み。そして息子の嫁の処分に戸惑う。ガラシャだけではなく、この悲劇は様々な人の思いが重なって生まれたのかもしれない。
【 感想 】帰ってきたヒトラー
この印象的な表紙に惹かれてつい手に取ってしまった。
確かこの本が原作の映画が今年に日本でも公開された。(まだ見ていないけど…ちょっと見たい)
ドイツ、というか世界でタブー視されているヒトラーをあえて風刺のネタにするなんて。すごいな…。
この物語はヒトラーの一人称ですべて書かれている。
ヒトラー目線で2010年代を見ている気分にさせてくれる。
やはり少々過激な思想が多いが、少ないところで「確かにそうかも…」と読者に思わせてしまうようなところもある。
「悪いことばかりじゃなかった」
物語の最後ではヒトラーとTV局の彼の職場仲間が新たな番組を作り、上のスローガンを掲げてまた歩き出していく。
色々と考えさせられるスローガンだ。
「悪いことばかりじゃなかった」…それは何に対して述べた言葉なのか。
ヒトラーが行ったことだろうか?
ヒトラーは自分の正義を貫いてあの所業を行ったと思う。少なくともこの小説内では彼は自分の正義に基づいて動いている。
人から見たら「悪いこと」だが、視点を変えるとある男の正義によるものだからそのように言えるのか。
それとも、過去から目をそむけないためにこのスローガンにしたのか。
1930~40年代はほぼ黒歴史化されていて、目も背けたくなる。
だがあえて「悪いことばかりじゃなかった」ということで、過去をまじまじと見るようさせたのか。
正直、続編を見てみたいと思う。が希望は薄いだろう。
この物語は彼らがまた歩みだすところできれいに終わっている。
この先に待つ未来はきれいな未来とは限らない。
綺麗なまま終わるほうがいい。
【映画の夏】ダージリン急行
今週のお題「映画の夏」
夏にぴったりな映画って沢山ありますよね!
お盆休みとかあるし、映画を見るには最適な時期
『映画の夏』ということで、私も1本オススメの映画を紹介します。
ダージリン急行 (2007)
上映時間 91分
個人的にこの監督の作品はすごい好きで、ダージリン急行もお気に入りの映画の一つ。
旅が好きな人にはもちろん、そうでない人にもおすすめしたい映画だ。
3兄弟がインドで列車に乗りながら旅をするお話。
映像から漂う夏の感じ。
舞台がインドということもあるからかもしれないが、“夏”が感じられる。
いつか劇中に出てくるような列車に乗って旅をしたい…そんな気持ちにさせてくれる(笑)
あと、なんといってもデザインが素敵!
ジャケットのデザインに惹かれて見たが、ジャケットだけでなく映画に出てくる道具や空間すべてのデザインがすごくいい!
ストーリー、キャスト、雰囲気すべてが素晴らしい。
感想についてはまた後日記事にしようと思う。
約90分という短めの映画なので、時間のある方には是非見て欲しい作品だ。
【 感想 】映画『 人生スイッチ 』
一気に映画を見たのでこちらも更新。
人生スイッチ(2014)
上映時間 122分
アルゼンチン=スペイン映画
おすすめ度 ★★★☆☆
オムニバス形式で、6つの短編からなっている。スペイン語圏の映画を見るのは初めてだった。多少笑いのツボは日本とスペインとで違うと思うけどこの映画はゲラゲラ笑えるような映画だ。
勝手な偏見だが、ポップコーン片手にコーラを飲みつつ映画にツッコミをいれながら見るのが似合う映画だ。
映画は暴力的な表現が多いので、この手が苦手な人は注意していただきたい。
この記事にネタバレは特にはない。
〇スイッチは日常に潜んでる
この映画の大きなテーマは“暴力と復讐”。
些細なことから登場人物たちの“スイッチ”が入ってしまい、そこからどんどんととんでもない方へと進んでいってしまう。
生きていればイライラすることだってある。 だがこの映画の主人公たちみたいに、そのイライラスイッチがとんでもない方向へと向かう事は少ないだろう。
人のスイッチとはどこにあるかわからない。
まるで地雷みたいだ、というのがこの映画でわかるだろう。
ただ、映画の登場人物たちはそのイライラの復讐の度が行き過ぎている。見ていてドン引きするが、映画なのでそこの過剰表現はいい具合のスパイスになっていると思う。
復讐だけだとなにも生まれない。
が、復讐のどこかになにか別の感情があれば結末が変わる。
私はこの映画で、『ヒーローになるために 』が一番好きな話だ。(話の内容は割愛。ぜひ見て欲しい)
この話だけ、主人公は復讐心をもつが家族への愛情も忘れずに持っている。
だからこそああいうラストになったのではないかな…?
人生、生きていれば人の踏んではいけない“スイッチ”を踏んでしまう。
それは人生を変えてしまうかもしれない。
この映画はそんな映画だ。
【 感想 】映画『 鑑定士と顔のない依頼人 』(ネタバレあり)
記念すべき第一回の記事の題材はこの映画!
鑑定士と顔のない依頼人(2013)
原題 La migiore offerta
上映時間 124分
主演 ジェフリー・ラッシュ
オススメ度 ★★★★☆
〇あらすじ
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。*1
タイトルに惹かれて手に取ったので事前情報は全くないままの視聴。
正直だまされました…。すごい映画だ!
映像も綺麗! 鑑定というテーマもあってか劇中に出てくる古美術品は勿論、いろいろなところに”美”が見られる。映像を見ているだけでも楽しいが、それよりもストーリーに惹かれる。
途中までは孤独な老人と広場恐怖症の娘の恋愛物語かと思ったら最後の最後でどんでん返し。見ていて思わず「えぇ~っ」て声が出てしまった。どんでん返しがすごすぎて心臓に悪かった。
映像、ストーリー、役者の演技すべてがGOOD!
考察しがいがある映画で、2回みるべき映画だと思うが結末の辛さを思うと2度目を見るのが思いやられる…。
↓以下からネタバレ注意↓
〇人の心は偽れる
確か劇中でオールドマン(主人公)の友人がこのようなセリフを言っていた気がする。意味深なセリフだな、と思っていた。だが見終わってみるとこのセリフは映画のテーマの一つに思える。
オールドマンは美術品の真贋は見抜けても、結局は人の心の真贋は見分けられなかった。かなしいなぁ…。
彼は今まで仕事一筋で、趣味は女の肖像画集め。
女と目を合わせられないが肖像画の中の女の人とは目を合わせられる。そこからどこか愛されたいという欲求が彼にはあったのではないか?
そこに声しかわからない謎の女から鑑定の依頼がやってくる。
最初はいらだっていた彼だがいつしか病気の彼女に惹かれていく。あれだけ世話をしたりいろいろあったら惹かれるのも無理はないだろう。
だがそれが運のつきだった…。
最後のオークションの仕事が終わって家に帰り、趣味の肖像画鑑賞の部屋へ行ったときのあの絶望感が心にぐっときた。今までせっかくコレクションしていたものが一瞬にして消え去り、残ったのは額縁の跡のみ。それと部屋にはあのカラクリ人形が。
あのシーンはぞっとするが、一番印象に残って一番好きなシーンだ。
そこからジェットコースターを下るがごとく、オールドマンの老いが始まる。
信じていたものを一瞬にして失う絶望感がものすごく出ている。
ジェフリー・ラシュの老いの演技がすごいリアルで、ちょっとゾッとした。あの演技もこの映画の見所の一つだろう。
真贋というテーマから見てみると、オールドマンのクレア(偽)に対する愛は”本物”だが、クレア(偽)のオールドマンに対する愛は”偽物”だろう。そう疑ってかかるとロバートとオールドマンの友情も、オールドマンが一方的に友情を感じているがロバートにとってオールドマンはただのカモでしかない。
若者たちは全員貧乏役者で、ずっと演技をしてきてオールドマンを騙してきた。
ただ、ロバートの機械修理の腕だけは本物だ。最後に出てきたレストランは彼の店で、彼女の語ったデイアンドナイトの思い出だけは本物だ。
英題の『THE BEST OFFER』を直訳すると『最上のオファー』。
だがこれは誰にとって”最上”なのか?
私はあの若者たちにとって最上の仕事だ、と思う。しかし考察というのは人それぞれ考えることがあるので、この答えが正しいとも限らない。
考え深い作品だ。
すごいおすすめの映画ですが、単純明快な映画が好き!っていう人にはあまりおススメできないかな。
映画の好みなんて人それぞれですものね。